餅鯛稲荷大明神  もちたいいなりだいみょうじん 「飯縄山の生い立ち」


飯縄山の生い立ち

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(信州理科研究会 教材研究 より)

飯縄山の生い立ちを探る
講師:戸隠地質化石館学芸員 田辺智隆先生 文責:長野支部

■飯縄山
 飯縄山は、多くの学校の校歌で歌われているように、長野市のシンボル的な山であり、5年生で登山する小学校も多く、児童生徒にとってもなじみ深い山でもあります。
 この飯縄山の生い立ちを探ることは、長野市周辺の地質的な生い立ちや、昔の人たちの暮らしや知恵に迫ることができる素材でもあります。
 今回、戸隠地質化石館学芸員の田辺智隆先生に飯縄山について教えていただく機会がありましたので、ここに整理して紹介します。ぜひ、教材化してみてください。 

 飯縄山は、標高1917mの成層火山で、単独で存在しているので、山麓を車で一周できるという特長があります。
 飯綱山の名前の由来は、頂上付近に天狗の麦飯と呼ばれる食べられる砂があり、飯砂と呼んだことから付けられたようです。
 飯縄山は、「飯綱山」と書かれることもありますが、それは観光開発を進めるために「飯縄」では一般の人に「いいづな」と読んでもらえないために、「飯綱」という字を当てるようになってきたようです。
 また、飯綱山は古くから修験者が修行した山でもあり、それが天狗信仰や、飯縄神社信仰、飯縄忍術につながっているといわれています。


■大座法師池
 大座法師池や浅川大池をはじめとする池が、飯綱山麓で標高1000m付近にたくさんあります。地図で確認すると、飯綱山を囲むようにほぼ円上にきれいに並んでいます。これは、飯縄山は、火山でありながら、山体に水を蓄えていている山でもあるからです。飯綱山のような火山が、水を蓄えることができるのは、次のような理由です。
  1. 火砕流や火山灰などに隙間が多くあり、水を蓄えやすい。
  2. 山なので、周囲より高く積雪が多い。
 その水が、飯綱山麓の標高1000mあたりで湧き出しているのです。そこで、昔の人は、この豊富な水を使って米作りを行ってきたわけです。しかし、この水は雪解け水と同様に水温が低いので、水田に水を引く前に太陽光で暖めるためにたくさんのため池を作ったのです。

 大座法師池も、このような考えで江戸時代初期に作られた池の一つです。ダイダラボッチの足跡という伝説もありますが、人工的に作られた池なのです。
 池を作る前は、湧水のある湿地帯だったと思われます。また、地形が安定しているので、谷側に堰(せき)を作って池にすることができたともいえます。
 写真にあるような浮島は、昔の泥炭層が水を蓄えたことによって浮いたものと考えられていて、この泥炭層が腐食して水質を悪くしています。

 
 戸隠バードラインをはさんで、大座法師池反対側の商店の裏側には、上ヶ屋(上ヶ屋)遺跡という約2万年前の旧石器時代の遺跡があります。この周辺には、他にもいくつかの遺跡があり、旧石器時代の人々が、水が豊富なこの地を中心にして生活をしていたことがわかります。
 この豊富な湧水ですが、ほとんどが芋井地区や浅川地区が水利権をもっています。大正時代、長野盆地でこれらが流行し、井戸が使えないというときがありました。このとき、長野市では、戸隠村から水を分けてもらったそうです。このとき、水を分けていただいた記念に作られたのが城山公園の噴水であり、現在でも長野市街地では、宝光社の東にある水源池と書かれている池から水を引いてきています。


■飯綱鉱泉
 スキー場のスキー学校やパトロールがある小屋の直ぐ裏に、飯綱鉱泉があります。よく見ると、スキー学校の看板の裏に、「飯綱鉱泉」の文字が見え、昔は鉱泉宿として利用されていたことがわかります。
 ここに湧き出している水は、炭酸塩を多く含んでおり、口に含んでみると酸っぱさを感じます。
 湧き出している水は、無色透明ですが、水路には赤い沈殿物がたくさんあることから、鉄分を多く含んでいることもわかります。
 毎分1000L程度の水が湧き出しているというのですから、驚きです。

 
 飯綱鉱泉の直ぐ後ろから湧き出ている水は、飲用することができ、結構おいしいです。
 写真は、裏手から誘引してきたものです。水源には、水神様が奉られています。



■鳴岩(なるいわ)
 ちょうどこの岩の下から、湧水がゴボゴボと音を立てながら湧き出しており、その音から鳴岩(なるいわ)と呼ばれたと考えられています。
 この岩の下からも、毎分1000Lもの水が湧き出しています。

  


■浅川大池
 浅川大池も、水が湧く標高1000mふきんに集まっている池の一つです。
 飯縄山は、すでに活動を停止しており、これからどんどん浸食されていく山ですが、水が湧き出しているところから崩れ、なだらかな地形を作り出していきます。
 飯綱大池は、過去に堰が決壊して、下流が洪水の被害にあったこともありますが、それ以上に池を作ることによって米の収量が上がることの方が大事だったのでしょう。

 周辺の山の整備も、水利権をもっている人たちが行っています。水を大事にするには、山も大事にしなければいけないことを、昔の人は知っていたのです。また、これより下流には、池がほとんどありません。
 昔の人は、地形を見極めて上手に利用してきたことがわかる証拠ともいえます。


■飯綱の火山灰(浅川ループライン沿いの露頭)
 道路を作るために、山の斜面を削って崖ができ、地層が出ているところがあります。このようなところを、露頭といいます。
 このような崖は、表面が崩れてしまって地層がわかりにくくなっていることもあるので、周辺に迷惑をかけない範囲で削ってみると、新鮮な地層を見ることができます。

 
 浅川ループライン沿いの露頭は、ほとんどが「ローム層」と呼ばれる赤土で、飯縄山が噴火したときの火山灰です。
 上の写真の露頭は、飯綱後期の火山灰で、約20万年前に水蒸気爆発によって飯縄山の西半分が崩れたあと、戸隠方面に火口丘がいくつかできた頃の火山灰だと考えられています。
 下方には、パミスの火山灰層、上方にスコリアの火山灰層が見られ、飯縄山の噴火も毎回同じだったわけではないことがわかります。



■逆谷地湿原(さかさやちしつげん)
 逆谷地という名前は、飯縄山の方に水が流れていくからという説がありますが、はっきりはしていません。
 一時は、周辺のゴルフ場開発の中で、潰されそうになった湿原ですが、10m以上も泥炭が積もっており、ボーリング調査の結果から、9万年前の阿蘇4の火山灰や、大山倉吉(DKP)の火山灰が見られ、10万年も前から湿原になっていたことがわかっています。尾瀬が湿原になって1万年しか立っていないことを考えると、非常に貴重な湿原であることがわかると思います。
 泥炭の中からは、暖かい気候を示すスギの花粉(約7万年前)や、寒い気候(氷河期)を示すトウヒ、ツガ、モミの花粉(3、4万年前)も見つかっています。

 このように、逆谷地湿原は、昔の気候の変動を記録されているところでもあるのです。
 大地を学ぶのは、自分の住んでいる場所の由来を調べることだということを考えてほしいと思います。


■浅川台ヶ窪の露頭
 台ヶ窪の露頭は、第三紀の地層です。礫(れき)と砂の互層になっており、約200万年前、海の中へ川が入り込むあたりでできた地層と考えることができます。
 それが隆起して山になり、その上に飯縄山ができたわけです。ダイナミックな活動があったことを推測することができます。
 また、地層の中には、断層もはっきりと確認できます。



■霊仙寺湖
 霊仙寺湖は、鉄分除去のために作られたため池です。
 ここから飯縄山を観測すると、西側の荒々しい斜面に対して、東側の信濃町側がなだらかなのを感じることができます。
 これは、長野市側が隆起が激しいのに対して、低い信濃町側に火砕流が流れて、だなだらかになったことがわかります。

 飯縄山だけでなく、周辺の山も見比べてみても、様々なことがわかります。
例えば、飯縄山と黒姫山、妙高山は3兄弟です。どれも第四紀に噴火してできた火山で、飯綱、黒姫、妙高の順に新しく火山なります。ですから、飯縄山は幾分丸くなってきており、妙高山は崩れやすく、今も地下にマグマがたまっていて温泉が湧き出しています。もし、兄弟に入れるなら、その先の火打山の次の焼山が近い兄弟になります。火打山は、海底火山が隆起したもので、より丸くなっているものもわかると思います。戸隠山も、海底火山が隆起したものです。斑尾山は、約80万年前の火山で、古く残骸が丸く残っている程度です。


■最後に
 地層や地形の読み方がわかってくると、長野市とその周辺の歴史がわかって非常におもしろいものだと思います。
 ぜひ、遠足などの下見や、遠足などで子どもたちにぜひ話して聞かせてほしいです。また、わからないことについては、学芸員として協力したいとのことでした。

(以上 信州理科研究会 教材研究 より)




( GANNのホームページ→長野の大地みどころ100選 より)

噴火を繰り返した飯縄山

戸隠村から見た飯綱山

 登山や林間学校、スキー教室など長野市民にとって一番なじみのある山、飯縄山。
かつては戸隠山と同じように信仰の対象ともなった山でもあります。しかし、この山
がかつて雲仙普賢岳や有珠山のように噴火を繰り返した火山であること、山の姿を大
きく変えてきたことなどはあまり知られていないようです。
 標高1917メートルの飯縄山は市街地からみるとなだらかな裾野をもち、すり鉢
を伏せたような姿をしています。しかし、山の西側には瑪瑙山・怪無山・高デッキな
どの小さな峰がいくつか見られ、景色がまったく違っています。この違いの中に飯縄
山の生い立ちの秘密が隠されています。
 地形に見られるように飯縄山は二重式火山なのです。現在の山頂となってなってい
る部分は外輪山にあたり、今から約25万年前から噴火を始めたと思われます。何度
も噴火を繰り返し、溶岩や火砕流が積み重なって富士山型の成層火山に成長しました。
一番標高が高くなった時には、標高2500メートルほどだったと推定する研究者も
います。この時の火山灰は北信一帯に広く降り積もりましたが、三水村赤塩付近でよ
く観察されるので赤塩ローム層と呼ばれます。その後、約20万年前、水蒸気爆発に
よって飯縄山の西半分が崩れてしまいました。そして、約15万年前から次の噴火が
新しく始まりました。怪無山・高デッキ・天狗山など、小さな火山が次々と溶岩ドー
ムを造りながら噴火しました。山麓に残された火山灰層から見ると、飯縄山の最後の
噴火は約5万年前。その後、火山の噴火は黒姫山や妙高山の方へ移って行きました。
 長野市民の憩いの山も、長い大地の歴史からみると大変新しい山で、何度も激しく
姿を変えてきたことがわかります。次はいつ姿を変えるのでしょうか。









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